ホワイトスポット

ホワイトスポットとは何か

ホワイトスポットとは

ホワイトスポットとは、歯の表面に現れる白い斑点や白濁した部分のことを指します。これらの白い斑点は、歯のエナメル質(歯の最も外側の硬い層)に生じる変化によって起こります。多くの患者様が「歯に白いシミができた」「歯が部分的に白くなった」と表現されることがありますが、これがまさにホワイトスポットです。

医学的には「エナメル質脱灰」や「初期う蝕」と呼ばれることもあります。エナメル質は人体で最も硬い組織ですが、酸によって溶け出す(脱灰する)性質があります。ホワイトスポットは、エナメル質からミネラル(主にカルシウムやリン酸)が失われた状態を示しており、歯の内部構造の変化により光の屈折率が変わることで、白く見えるのです。このような状態は「サブサーフェス脱灰」とも呼ばれ、表面は比較的保たれているものの、内部でミネラルの流出が起きている段階を表します。

ホワイトスポットができる原因

ホワイトスポットができる原因

虫歯が原因のホワイトスポット

最も一般的な原因は、虫歯の初期段階による脱灰です。お口の中の虫歯菌(主にミュータンス菌やラクトバチラス菌)が、食べ物や飲み物に含まれる糖分を分解する際に乳酸などの酸を産生します。この酸によって歯のエナメル質からカルシウムやリン酸などのミネラルが溶け出す現象を「脱灰」と呼びます。この脱灰が軽度の段階では、歯に穴は開かずにホワイトスポットとして現れます。特に歯と歯茎の境目、歯と歯の間、奥歯の溝など、歯ブラシが届きにくく食べかすが停滞しやすい部位に発生しやすい傾向があります。

また、矯正治療中のブラケット周囲や、唾液の分泌が少ない方、頻繁に甘いものを摂取する方にも起こりやすくなります。このタイプのホワイトスポットは「初期う蝕」とも呼ばれ、適切な処置により進行を止めることが可能です。

フッ素の過剰摂取による
ホワイトスポット

フッ素の過剰摂取による「歯のフッ素症(dental fluorosis)」も、ホワイトスポットの重要な原因の一つです。歯の形成期(主に生後6ヶ月から8歳頃まで)にフッ素を継続的に過剰摂取すると、エナメル質の形成過程で異常が生じ、白い斑点や縞模様、重度の場合は茶色い変色が現れることがあります。

この現象は、エナメル質を形成する細胞(エナメル芽細胞)の働きがフッ素により阻害されることで起こります。永久歯の形成時期に発生するため、一度できると生涯にわたって残る特徴があります。軽度のフッ素症では細かい白い線や点として現れ、中等度では白い斑点が目立つようになります。適正なフッ素使用量を守ることで予防が可能です。

外傷、その他の原因の
ホワイトスポット

歯への外傷も ホワイトスポットの原因となります。転倒や事故などで歯に強い衝撃が加わると、エナメル質内部の構造が変化し、白い斑点として現れることがあります。特に前歯に多く見られ、外傷から数週間から数ヶ月後に症状が現れることもあります。

その他の原因としては、遺伝的要因による「発育性エナメル質形成不全」があります。これは歯の発育過程で何らかの異常が生じることで起こり、全身疾患や栄養不良、高熱を伴う病気の既往などが関与することもあります。

また、長期間の酸性飲料(炭酸飲料やスポーツドリンクなど)の頻繁な摂取、胃食道逆流症による胃酸の影響、一部の抗生物質の使用なども原因となる場合があります。喫煙や口呼吸による口腔乾燥も、間接的にホワイトスポット形成に関与することがあります。

治療法と予防について

ホワイトスポットの治療と予防

フッ素やMIペーストの使用

初期虫歯が原因のホワイトスポットに対する最も基本的な治療法は、フッ素を用いた再石灰化療法です。歯科医院でのフッ素塗布や、高濃度フッ素入り歯磨き粉(1450ppm程度)の使用により、エナメル質の再石灰化を促進することができます。フッ素はカルシウムと結合してフルオロアパタイトを形成し、酸に対する抵抗性を高める働きがあります。

MIペースト(CPP-ACP:カゼインホスホペプチド-非結晶リン酸カルシウム)の応用も効果的です。これは牛乳由来の蛋白質カゼインにカルシウムとリン酸を結合させたもので、歯の表面に塗布することで持続的にミネラルを供給し、再石灰化を促進します。就寝前の歯磨き後に使用することで、より高い効果が期待できます。治療期間は通常3ヶ月から6ヶ月程度で、定期的な経過観察が必要です。

削って詰める治療

再石灰化療法で十分な改善が得られない場合や、審美的な要求が高い場合には、ホワイトスポット部分を少し削り取ってコンポジットレジン(歯科用プラスチック)で詰める治療を行います。削る量は通常0.1〜0.3mm程度の極薄い層で、多くの場合麻酔は必要ありません。

現在のコンポジットレジンは色調の再現性が高く、天然歯との境界がほとんど分からないレベルまで修復することが可能です。治療は通常1回で完了し、即日で自然な見た目を回復できます。ただし、経年的な色調変化や辺縁の磨耗などにより、5〜10年後に再治療が必要になる場合もあります。

削って型をとって被せる治療

ホワイトスポットが広範囲にわたる場合や、他の審美的問題も同時に解決したい場合には、ラミネートベニアやオールセラミッククラウンなどの補綴治療を選択します。

ラミネートベニアは歯の表面を0.5〜0.7mm程度削り、薄いセラミックの板を貼り付ける治療法です。

オールセラミッククラウンは歯を全周にわたって1〜2mm程度削り、セラミック製のかぶせ物で覆う方法です。これらの治療は審美性が非常に高く、自然な透明感と美しい色調を実現できます。耐久性も高く、適切なメンテナンスにより10〜20年以上の長期使用が可能です。ただし、健康な歯質を多く削る必要があるため、慎重な適応判断が必要です。

歯を削らない治療

近年注目されているのが、アイコン(Icon)と呼ばれる樹脂浸潤法です。これは特殊な酸でエナメル質表面を処理した後、低粘度の樹脂を浸透させてホワイトスポットを改善する治療法です。歯を削ることなく、1回の治療でホワイトスポットを目立たなくすることができます。

また、歯のホワイトニング(漂白)も有効な選択肢の一つです。ホワイトスポット周囲の健康な歯質を漂白することで、色調の差を少なくし、ホワイトスポットを目立たなくすることができます。オフィスホワイトニングとホームホワイトニングがあり、患者様のライフスタイルに合わせて選択可能です。

予防について

予防に関しては、適切な歯磨きとフッ素の適正使用が基本となります。特に就寝前の歯磨きを徹底し、糖分の摂取頻度を控えることが重要です。定期的な歯科検診により早期発見・早期治療を心がけ、お口の中の酸性環境を中和するために十分な唾液分泌を促すことも大切です。フッ素については、年齢に応じた適量の使用により虫歯予防効果を得ながら、過剰摂取による副作用を避けることが重要です。

よくある質問

Q.ホワイトスポットは自然に治りますか?
A.初期虫歯が原因のホワイトスポットは、適切なケアにより再石灰化が促進され、ある程度の改善が期待できます。しかし、完全に元通りになることは少なく、多くの場合は治療が必要です。フッ素症が原因の場合は自然治癒は期待できません。
Q.ホワイトスポットがあると
必ず虫歯になりますか?
A.すべてのホワイトスポットが虫歯に進行するわけではありませんが、初期虫歯が原因の場合は適切なケアを行わないと進行する可能性があります。早めの対処が重要です。
Q.子どものホワイトスポットは
大人になったら消えますか?
A.歯の発育期にできたホワイトスポット(特にフッ素症によるもの)は永久的なものです。ただし、成長とともに目立たなくなることもあります。
Q.ホワイトスポットの治療は痛いですか?
A.フッ素塗布や樹脂浸潤法などの初期治療は痛みを伴いません。削って詰める治療の場合も、表層のみの処置なら麻酔が不要な場合が多いです。

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