歯周病

歯周病とは?

歯周病とは

歯周病は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。歯の周りの歯ぐき(歯肉)や、歯を支える骨が徐々に破壊されていく病気で、日本人の成人の約8割が罹患していると言われています。

歯周病の特徴

  1. 無痛性の進行初期段階では痛みがほとんどないため、気づかないうちに進行します。
  2. 段階的な悪化ある日突然重度になるのではなく、時間をかけて徐々に進行します。
  3. 予防の重要性重度になってからでは治療が困難になるため、早期発見・早期治療が大切です。

歯周病のメカニズム

歯と歯肉の境目(歯肉溝)の清掃が不十分だと、そこに細菌が蓄積し、歯垢(プラーク)や歯石を形成します。これらの細菌が毒素を産生し、歯肉に炎症を起こします。炎症が進行すると、歯を支える骨(歯槽骨)まで破壊され、最終的には歯を失う原因となります。

歯周病治療の流れ

STEP 01:軽度歯周病の治療

症状の特徴

  • 歯肉の軽度な腫れや赤み
  • ブラッシング時の出血
  • 歯肉溝の深さ:3〜4mm程度
軽度歯周病の治療

治療内容

1.初回検査・診断
歯周病検査

歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)の深さを専用の器具で測定します。

レントゲン撮影

歯を支える骨の状態を確認します。

歯石除去

目に見える範囲の歯石を専用器具で丁寧に除去します。

検査のイメージ

窓のサッシの溝が深いほど埃が溜まりやすく掃除が困難になるのと同様に、歯周ポケットが深いほど細菌が蓄積しやすくなります。

2.セルフケア指導
正しいブラッシング方法

患者様の口腔内に合わせた歯磨き方法を指導

歯間清掃具の使用法

デンタルフロスや歯間ブラシの適切な使用方法

生活習慣の改善

喫煙、ストレス管理、十分な睡眠の重要性

食生活指導

糖分の摂取制限、バランスの取れた栄養摂取

専用器具による口腔内洗浄

超音波スケーラーなどを使用した専門的なクリーニング

3.再評価

初回治療から約4〜6週間後に再検査を行い、治療効果を確認します。歯周ポケットの深さの変化や歯肉の状態を詳しく調べます。

4.メンテナンスへ移行

状態が安定すれば、3〜6ヶ月間隔での定期メンテナンスに移行します。改善が見られない場合は、STEP2〜4を繰り返し行います。

STEP 02:中等度歯周病の治療

症状の特徴

  • 歯肉の明らかな腫れと出血
  • 歯周ポケットの深さ:4〜6mm程度
  • 軽度の歯の動揺
  • 口臭の増加
中等度歯周病の治療

治療内容

1.基本治療
(軽度歯周病と同様)

初回検査、目視範囲の歯石除去を行います。

2.深部清掃とセルフケア強化
SRP(スケーリング・ルートプレーニング)

歯周ポケット深部の歯石や感染した歯根面を手用器具で丁寧に除去

より詳細なブラッシング指導

深いポケットに対応した清掃方法の指導

生活習慣の徹底改善
  • 禁煙指導(喫煙は歯周病の最大のリスクファクター)
  • ストレス管理(免疫力低下を防ぐため)
  • 睡眠の質の向上(組織修復に重要)
治療のポイント

いくら専門的な器具で歯石を除去しても、患者様自身の日常ケアが不十分では再発してしまうため、セルフケアの習得が治療成功の鍵となります。

3.再評価と治療方針の決定

STEP1→2を繰り返すことで、歯周ポケットが徐々に浅くなり、歯肉が引き締まってきます(歯肉の成熟)。再検査で改善度を確認し、必要に応じて外科治療の検討を行います。

4.外科治療(必要な場合)

改善が不十分な部位に対して、以下の外科的アプローチを検討します。状態が安定したらメンテナンスに移行します。

歯肉剥離搔爬術(フラップ手術)

歯肉を切開し、直視下で深部の歯石や感染組織を完全に除去

歯周組織再生療法

特殊な材料を使用して、失われた歯周組織の再生を促進

STEP 03:重度歯周病の治療

症状の特徴

  • 歯周ポケットの深さ:6mm以上
  • 明らかな歯の動揺
  • 歯肉からの膿の排出
  • 歯肉の後退
  • 強い口臭
重度歯周病の治療

治療内容

1〜3.基本治療から再評価まで

中等度歯周病と同様の治療を、より慎重に段階的に行います。

4.包括的外科治療

基本治療で改善しない部位に対して、以下の治療を組み合わせます。

重度歯周病では、単独の治療法では限界があるため、複数の治療法を組み合わせた包括的なアプローチが必要です。

歯肉剥離搔爬術

感染組織の完全な除去

歯周組織再生療法

GTR法、エムドゲイン法などによる組織再生

歯の固定術

動揺している歯を健康な歯と連結して安定させる

補綴治療

失われた機能を回復するためのブリッジやクラウンの装着

STEP 04:最重度歯周病の治療

症状の特徴

  • 歯を支える骨の大部分が失われている
  • 著しい歯の動揺
  • 保存が困難な状態
最重度歯周病の治療

治療内容

1.抜歯の決定

歯を支える骨がほとんど失われ、保存が困難と判断された場合は抜歯を行います。

2.抜歯の手順
局所麻酔

抜歯部位とその周囲に浸潤麻酔を施行

慎重な歯の除去

周囲組織への損傷を最小限に抑えながら歯を除去

骨整形

必要に応じて、歯槽骨の形態を整える

縫合と止血

抜歯窩に止血剤を填入し、縫合して確実な止血を行う

3.抜歯後の管理
  • 感染予防のための抗生物質投与
  • 痛み管理のための適切な鎮痛剤処方
  • 定期的な経過観察
4.機能回復への準備

抜歯後の治癒期間を経て、インプラント、ブリッジ、入れ歯などによる機能回復治療を計画します。

患者様にお願いしたいこと

  1. 毎日の適切なプラークコントロール歯磨き、歯間清掃の継続
  2. 定期メンテナンスの受診症状がなくても定期的なチェック
  3. 生活習慣の改善禁煙、ストレス管理、バランスの取れた食事
  4. 早期発見・早期治療の意識わずかな変化も見逃さない

治療の限界と現実

歯周病治療は「完治」ではなく「コントロール」が目標です。失われた組織を完全に元に戻すことは困難ですが、適切な治療とメンテナンスにより、病気の進行を止め、お口の健康を長期間維持することが可能です。

よくある質問

Q.歯周病は治るのですか?
A.歯周病は「完治」というよりも「コントロール」する病気です。一度失われた歯を支える骨や歯肉を完全に元に戻すことは困難ですが、適切な治療とメンテナンスにより、病気の進行を止めて安定した状態を長期間維持することが可能です。早期発見・早期治療であれば、より良い結果が期待できます。
Q.歯周病治療は痛いですか?
A.基本的な歯石除去や清掃は、多少の不快感はありますが強い痛みはありません。深い部分の清掃や外科的処置の際は、局所麻酔を使用するため痛みを感じることはほとんどありません。治療後に軽い痛みや腫れが出ることがありますが、処方されるお薬で十分コントロールできます。
Q.治療期間はどのくらいかかりますか?
A.歯周病の程度により大きく異なります。(軽度: 2~3ヶ月程度/中等度: 4~6ヶ月程度/重度: 6ヶ月~1年以上)
ただし、患者様のセルフケアの習得度や生活習慣の改善によって期間は変わります。治療終了後も定期的なメンテナンスが必要です。
Q.歯磨きで血が出るのは歯周病ですか?
A.歯磨き時の出血は歯周病の典型的な初期症状です。健康な歯肉からは出血しません。ただし、出血を怖がって歯磨きを避けると、かえって症状が悪化してしまいます。正しいブラッシング方法で丁寧に清掃を続けることで、通常1~2週間で出血は改善します。改善しない場合は早めにご相談ください。
Q.歯周病は遺伝しますか?
A.歯周病になりやすい体質は遺伝的要素がありますが、歯周病そのものが遺伝するわけではありません。家族に歯周病の方がいる場合は、より注意深いケアと定期的なチェックが重要です。適切な予防により、遺伝的リスクがあっても歯周病を防ぐことは十分可能です。
Q.歯周病は他の病気と関係が
ありますか?
A.はい、歯周病は全身の健康と深く関わっています。特に以下の疾患との関連が報告されています。
・糖尿病(相互に悪影響を与える)
・心疾患・脳血管疾患
・誤嚥性肺炎
・早産・低出生体重児
・関節リウマチ
歯周病の治療は、お口の健康だけでなく全身の健康維持にも重要です。
Q.妊娠中でも歯周病治療は
受けられますか?
A.妊娠中でも歯周病治療は受けられます。むしろ、妊娠中はホルモンの変化により歯肉炎になりやすいため、積極的な治療をお勧めします。妊娠安定期(16~28週)が治療に最適な時期です。使用する麻酔薬やお薬についても、妊娠中でも安全なものを選択しますのでご安心ください。
Q.歯周病治療後の食事制限は
ありますか?
A.基本的な歯石除去後は特に制限はありません。外科的処置を行った場合は、以下の点にご注意ください。
・手術当日は柔らかい食事を心がける
・熱すぎる食べ物や飲み物は避ける
・アルコールや香辛料の強い食べ物は控える
・手術部位での咀嚼は避ける
具体的な注意事項は、処置後に詳しくご説明いたします。
Q.タバコは歯周病にどのような影響が
ありますか?
A.タバコは歯周病の最大のリスクファクターの一つです。
・血流が悪くなり、歯肉の治癒が遅れる
・免疫力が低下し、細菌感染しやすくなる
・歯周病の症状(出血など)がマスクされ、発見が遅れる
・治療効果が大幅に低下する
禁煙により歯周病の改善効果は飛躍的に向上します。禁煙のサポートも行っていますので、ぜひご相談ください。
Q.歯周病予防のために家庭で
できることはありますか?
A.日常的にできる効果的な予防法をご紹介します。
・正しい歯磨き: 歯と歯肉の境目を意識したブラッシング
・歯間清掃: デンタルフロスや歯間ブラシの毎日の使用
・規則正しい生活: 十分な睡眠、バランスの取れた食事
・ストレス管理: 適度な運動、リラックスする時間を作る
・定期検診: 症状がなくても3~6ヶ月ごとのチェック
・禁煙: 喫煙している場合は禁煙を強くお勧めします
Q.歯周病治療の費用はどのくらい
かかりますか?
A. 基本的な歯周病治療は保険が適用されます。ただし、お口の状態により治療回数や内容が変わるため、詳しい費用は検査後にご説明いたします。
・初回検査・診断: 約3,000~5,000円
・基本的な歯石除去: 1回あたり約1,000~3,000円
・深部清掃(SRP): 1回あたり約1,000~2,000円
・外科的処置: 1部位あたり約5,000~15,000円

Treatment

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