最も一般的で確実性の高い治療方法です。歯の表面にブラケットという小さな装置を接着し、そこにワイヤーを通して歯を移動させます。
金属製のものが最も効果的ですが、審美性を考慮したセラミック製やプラスチック製のものも選択できます。複雑な症例にも対応でき、治療結果が予測しやすいのが特徴です。
矯正歯科
矯正歯科とは何か
矯正歯科は、歯並びや咬み合わせの異常を改善する専門的な歯科分野です。単に見た目を美しくするだけでなく、お口の機能を正常に回復させることが主な目的となります。
歯並びが悪い状態を専門的には「不正咬合(ふせいこうごう)」と呼びます。これは遺伝的要因だけでなく、幼少期の指しゃぶりや舌癖、口呼吸などの後天的な要因によっても引き起こされます。不正咬合は見た目の問題だけでなく、虫歯や歯周病のリスクを高め、咀嚼機能の低下、発音障害、顎関節症の原因となることもあります。
現代の矯正治療では、従来の金属製ブラケット(歯に付ける装置)だけでなく、透明なマウスピース型装置や舌側矯正(歯の裏側に装置を付ける方法)など、様々な選択肢があります。治療技術の進歩により、以前よりも快適で目立ちにくい治療が可能になっています。
矯正治療の種類と特徴
ワイヤー矯正(ブラケット矯正)

マウスピース型矯正装置(アライナー矯正)
透明なプラスチック製のマウスピースを段階的に交換しながら歯を移動させる方法です。
取り外しが可能なため、食事や歯磨きの際の不便さが少なく、見た目も目立ちません。ただし、患者様の協力度(装着時間の遵守)が治療結果に大きく影響するため、自己管理能力が重要になります。

舌側矯正(リンガル矯正)
歯の裏側(舌側)にブラケットとワイヤーを装着する方法で、外から装置が見えないという大きな利点があります。
しかし、舌に装置が当たることで発音に影響が出やすく、また治療費も通常の表側矯正より高額になる傾向があります。治療技術的にも高度な専門性が要求されます。

治療の流れと期間
矯正治療は長期間にわたる治療であり、一般的に2〜3年程度の期間が必要です。治療は大きく分けて「動的治療期間」と「保定期間」の二つのフェーズに分かれます。
- 初診・検査・診断 まず詳細な検査を行います。レントゲン撮影(パノラマX線写真、頭部X線規格写真)、歯型の採取、口腔内写真撮影、顔貌写真撮影などを実施し、骨格的な問題の有無、歯の移動可能性、治療計画を立案します。この検査結果をもとに、最適な治療方法と期間、費用について詳しくご説明いたします。
- 動的治療期間(1〜3年) 実際に歯を移動させる期間です。月に1回程度の来院が必要で、装置の調整や経過観察を行います。歯は1ヶ月に約1mm程度の速度で移動するため、無理に急がせることはできません。この期間中は虫歯や歯周病の予防により一層注意を払い、丁寧なブラッシングが重要になります。
- 保定期間(2〜3年以上) 歯を移動した後、その位置で安定させるための期間です。リテーナーという保定装置を使用して、歯が元の位置に戻ろうとする力(後戻り)を防ぎます。この期間を軽視すると、せっかく綺麗に並んだ歯が再び乱れてしまう可能性があります。保定期間中の来院は3〜6ヶ月に1回程度となります。
矯正治療のメリットと注意点
メリット
矯正治療の最大のメリットは、機能的な改善にあります。
歯並びが改善されることで、食べ物をしっかりと咀嚼できるようになり、消化機能の向上につながります。また、歯磨きがしやすくなることで虫歯や歯周病のリスクが大幅に減少し、長期的な口腔健康の維持に貢献します。
発音の改善も期待できます。特に前歯の位置異常による「サ行」「タ行」の発音障害や、開咬による「サ行」の音の漏れなどが改善されます。審美的な改善により、自信を持って笑顔を見せることができるようになり、心理的な効果も大きいとされています。
注意点とリスク
矯正治療中は虫歯や歯周病のリスクが高まるため、従来以上に丁寧な口腔ケアが必要です。装置周辺にプラーク(歯垢)が蓄積しやすく、白濁や初期虫歯が発生することがあります。
稀ですが、歯根吸収(歯の根が短くなる現象)や歯髄壊死(歯の神経が死んでしまう現象)が起こる可能性もあります。これらは事前の検査で予測が困難な場合もありますが、定期的な経過観察により早期発見・対処が可能です。
治療期間中は硬い食べ物や粘着性の高い食べ物の制限があり、装置の破損や脱落を防ぐために食事内容に注意が必要です。
よくある質問
- Q.大人になってからでも矯正治療はできますか?
- A.はい、可能です。成人矯正は珍しいことではありません。ただし、成長期の子どもと比べて歯の移動に時間がかかる場合があり、歯周病のリスク管理がより重要になります。年齢的な上限は特にありませんが、口腔内の健康状態が良好であることが前提となります。
- Q.治療中に痛みはありますか?
- A.装置を付けた直後や調整後2〜3日間は、歯が浮いたような感覚や軽い痛みを感じることがあります。これは歯が動いている証拠でもあり、通常は数日で慣れます。市販の痛み止めで対処できる程度の痛みです。
- Q.治療費はどれくらいかかりますか?
- A.治療方法や症例の複雑さによって異なりますが、一般的に80万円〜150万円程度です。多くの医院で分割払いが可能です。子どもの矯正治療の一部は医療費控除の対象となる場合があります。詳しくは初診時にお見積もりいたします。
- Q.治療中に転居が必要になった場合はどうなりますか?
- A.矯正治療は継続性が重要ですので、転居先での治療継続が必要です。多くの場合、転居先の矯正専門医をご紹介し、治療情報の引き継ぎを行います。ただし、追加の費用が発生する可能性があります。
- Q.部分的な矯正も可能ですか?
- A.はい、前歯部分だけの「部分矯正」も可能です。ただし、奥歯の咬み合わせに問題がある場合は全体的な矯正が必要になることもあります。まずは検査を受けて、部分矯正で対応可能かどうかを判断いたします。























