ボツリヌス治療
ボツリヌス治療とは
ボツリヌス治療は、ボツリヌス菌が産生するボツリヌストキシンという天然のタンパク質を医療用に精製し、筋肉の過度な緊張や収縮を和らげる治療法です。この治療法は、もともと眼瞼痙攣などの神経疾患の治療として開発されましたが、現在では歯科領域においても様々な症状の改善に効果的であることが実証されています。
ボツリヌストキシンは、神経と筋肉の接合部において神経伝達物質であるアセチルコリンの放出を一時的に抑制することで作用します。これにより、筋肉の過度な収縮が抑えられ、関連する症状の改善が期待できます。治療効果は注射後数日から1週間程度で現れ始め、通常3~6ヶ月程度持続します。効果が徐々に薄れてきた場合は、再度治療を受けることが可能です。
歯科における
ボツリヌス治療の適応症
歯科領域では、主に咬筋や側頭筋などの咀嚼筋の過緊張に関連する症状に対してボツリヌス治療が適用されます。最も一般的な適応症は歯ぎしりや食いしばりです。これらの症状は、睡眠中や日中の無意識下で起こることが多く、歯や顎関節に過度な負担をかけ、歯の摩耗、詰め物や被せ物の破損、顎関節症、頭痛、肩こりなどの様々な問題を引き起こします。
また、顎関節症に伴う咀嚼筋の痛みや緊張に対しても効果的です。従来の治療法であるマウスピース療法や薬物療法で十分な効果が得られない場合の選択肢として、ボツリヌス治療が注目されています。さらに、ガミースマイル(笑った時に歯茎が過度に見える状態)の改善や、口角を下げる筋肉の過緊張による口元の表情の改善にも応用されています。
治療前には、患者様の症状や生活習慣を詳しく伺い、口腔内検査や顎関節の診査を行った上で、最適な治療計画を立案いたします。
こんな方におすすめ
- 夜間の歯ぎしりや食いしばりでお悩みの方
- 朝起きたときに顎が疲れている、痛みを感じる方
- マウスピース治療で十分な効果が得られなかった方
- 歯の摩耗や詰め物・被せ物の破損を繰り返している方
- 顎関節症による痛みや口が開きにくい症状がある方
- 歯ぎしり・食いしばりが原因の頭痛や肩こりがある方
- ガミースマイル(笑ったときに歯茎が見えすぎる)が気になる方
- エラの張りが気になる方(咬筋の発達による)
- 口角が下がった表情を改善したい方
治療の流れと安全性
ボツリヌス治療は外来で行う比較的簡単な処置です。治療当日は、まず治療部位を清潔にし、必要に応じて表面麻酔を行います。その後、極細の注射針を用いて、対象となる筋肉に適量のボツリヌストキシンを注入します。注射箇所は通常片側2~3箇所程度で、処置時間は10~15分程度です。
注射後は、治療部位を氷で冷やしていただき、数時間は激しい運動や入浴、マッサージを避けていただきます。また、注射当日は治療部位を強く押したり揉んだりしないよう注意が必要です。これは、薬剤が適切な部位に留まるようにするためです。
安全性について、ボツリヌス治療は世界中で長年にわたって使用されており、適切に行われれば非常に安全な治療法です。副作用としては、注射部位の軽微な腫れや内出血が起こることがありますが、通常は数日から1週間程度で自然に改善します。また、稀に一時的な筋力低下や咀嚼時の違和感を感じることがありますが、これも時間とともに回復します。
よくある質問
- Q.治療の効果はいつから現れますか?
- A.効果は注射後3~7日程度で現れ始めます。最大の効果は2週間後頃に得られ、通常3~6ヶ月程度持続します。
- Q.痛みはありますか?
- A.極細の針を使用するため、痛みは最小限です。必要に応じて表面麻酔も使用できます。多くの患者様が「思ったより痛くなかった」とおっしゃいます。
- Q.副作用はありますか?
- A.主な副作用は注射部位の軽微な腫れや内出血です。稀に一時的な咀嚼力の低下を感じることがありますが、いずれも時間とともに改善します。
- Q.治療後の制限はありますか?
- A.治療当日は激しい運動、入浴、治療部位のマッサージを避けてください。翌日からは通常の生活に戻れます。
- Q.繰り返し治療を受けても
大丈夫ですか? - A.はい、効果が薄れてきた際には繰り返し治療を受けることが可能です。長期間の使用による重篤な副作用の報告はありません。























