インプラント治療

インプラント治療について

インプラント

歯を失ってしまった時、多くの方が「もう元通りにはならない」と諦めてしまいがちです。しかし現在では、インプラント治療という画期的な方法により、天然歯とほぼ同等の機能と見た目を回復することが可能になりました。このページでは、インプラント治療について、その仕組みから治療の流れまで詳しく解説いたします。

インプラントとは何か?
その仕組みと構造

インプラントの基本構造

インプラントの基本構造

インプラントは、失った歯の根の部分を人工的に再現する治療法です。治療に使用されるインプラント体は、主に3つの部分から構成されています。まず「インプラント体(スクリュー、フィクスチャー)」と呼ばれる、顎の骨に直接埋め込まれるネジのような部分があります。これは純チタンまたはチタン合金で作られており、生体適合性に優れているため、骨と結合(オッセオインテグレーション)する特性があります。

次に「アバットメント」という、インプラント体と人工歯をつなぐ連結部分があります。この部分は治療の最終段階で取り付けられ、人工歯を支える土台となります。最後に「上部構造(人工歯冠、クラウン)」と呼ばれる、実際に見える歯の部分が装着されます。この部分はセラミックやジルコニアなど、天然歯に近い色調と強度を持つ材料で作製されます。

オッセオインテグレーションとは?

インプラント治療の成功の鍵となるのが「オッセオインテグレーション」という現象です。これは1950年代にスウェーデンの研究者ブローネマルク博士によって発見された、チタンと骨が直接結合する生体現象です。通常、異物が体内に入ると免疫反応により排除されますが、チタンは生体適合性が極めて高く、骨細胞がチタン表面に直接接着し、時間をかけて強固に結合します。

この結合プロセスには通常2〜6ヶ月の期間を要します。この間、骨芽細胞という骨を作る細胞がチタン表面で活発に働き、新しい骨組織を形成していきます。現代のインプラント体表面には特殊な処理が施されており、表面積を増大させることで、より早く確実な骨結合を促進する工夫がなされています。

インプラント治療の適応と診断

インプラント治療の適応と診断

治療が適している症例

インプラント治療は、1本の歯を失った場合から、全ての歯を失った無歯顎の患者様まで、幅広い症例に対応可能です。従来のブリッジ治療では健康な隣の歯を削る必要がありましたが、インプラントでは隣接歯に負担をかけることなく、失った歯のみを回復できます。また、部分入れ歯や総入れ歯に比べて、咀嚼効率が大幅に向上し、食事の制限も少なくなります。

特に若年者で事故や外傷により前歯を失った場合、審美性と機能性の両面でインプラント治療の恩恵は計り知れません。また、奥歯を失った場合も、インプラントにより咀嚼力を回復することで、残存歯への負担軽減と顎関節への好影響が期待できます。

精密な診断プロセス

インプラント治療を成功させるためには、綿密な術前診断が不可欠です。まず、口腔内の詳細な検査により、歯周病の有無、噛み合わせの状態、残存歯の健康状態を評価します。次に、CT撮影により三次元的な画像解析を行い、顎骨の厚み、高さ、骨密度、重要な解剖学的構造(上顎洞、下歯槽神経など)の位置を正確に把握します。

現在では、CTデータを基にコンピューターシミュレーションを行い、最適なインプラント埋入位置を事前に決定する「デジタルプランニング」が主流となっています。これにより、手術の精度向上と治療時間の短縮、患者様の負担軽減が実現されています。また、全身的な健康状態の評価も重要で、糖尿病、骨粗鬆症、喫煙習慣などがある場合は、治療計画に反映させる必要があります。

治療の流れと期間

  1. 初期段階:準備と計画 インプラント治療は、通常6ヶ月から1年程度の期間を要する段階的な治療です。初回相談では、患者様の症状やご希望を詳しくお聞きし、口腔内検査とレントゲン撮影を行います。その後、CT撮影による精密検査を実施し、治療計画を立案します。この段階で、インプラントの本数、埋入位置、治療期間、費用について詳しくご説明いたします。
    治療開始前には、必要に応じて歯周病治療や虫歯治療を完了させます。口腔内の感染源を除去し、清潔な環境を整えることが、インプラント治療成功の前提条件となります。また、骨量が不足している場合は、骨移植や骨再生誘導法(GBR法)などの前処置が必要になることがあります。 初期段階:準備と計画
  2. 手術段階:埋入から治癒まで インプラントの埋入手術は、多くの場合局所麻酔下で行われる外来手術です。手術時間は埋入本数により異なりますが、1本あたり30分から1時間程度が目安です。歯茎を切開し、精密にドリリングした穴にインプラント体を埋入します。現在では、歯茎を切開しない「フラップレス手術」や、抜歯と同時にインプラントを埋入する「抜歯即時埋入」など、患者様の負担を軽減する術式も選択可能です。
    手術後は、オッセオインテグレーションの期間に入ります。下顎では2〜3ヶ月、上顎では3〜6ヶ月程度の治癒期間を設けます。この間、仮歯を装着して日常生活に支障がないよう配慮いたします。治癒期間中は定期的な検診により、治癒状態を確認し、必要に応じて調整を行います。 手術段階:埋入から治癒まで
  3. 最終段階:上部構造の装着 オッセオインテグレーションが完了したら、アバットメントの装着と最終的な人工歯の製作に入ります。まず、歯茎の形態を整える処置を行い、その後精密な印象採得(型取り)を実施します。技工所では、患者様一人ひとりの歯の色調、形態に合わせて精密な人工歯を製作します。
    最終的な上部構造の装着時には、噛み合わせの調整を慎重に行います。インプラントは天然歯と異なり歯根膜がないため、咬合力の調整が特に重要です。装着後は、定期的なメインテナンスプログラムに移行し、長期的な成功を確保していきます。 最終段階:上部構造の装着

よくある質問

Q.インプラント治療に痛みはありますか?
A.手術は局所麻酔下で行うため、手術中の痛みはほとんどありません。術後2〜3日程度は軽度の腫れや痛みがある場合がありますが、処方する鎮痛剤で十分コントロール可能です。多くの患者様が「思っていたより楽だった」とおっしゃいます。
Q.インプラントはどのくらい持ちますか?
A. 適切なメインテナンスを行えば、10年生存率は95%以上と報告されています。しかし、喫煙や歯周病、歯ぎしりなどはインプラントの寿命に悪影響を与えるため、生活習慣の改善とともに定期的な検診が重要です。
Q.年齢制限はありますか?
A.下限は骨の成長が完了する18歳頃、上限は明確に定められていませんが、全身状態や骨質を総合的に判断します。80歳代の方でも条件が整えば治療可能です。重要なのは年齢よりも口腔内と全身の健康状態です。
Q. 治療費はどのくらいかかりますか?
A.インプラント治療は基本的に保険適用外の自由診療です。1本あたりの費用は、診査・診断から上部構造装着まで含めて30〜50万円程度が相場です。使用するインプラントシステムや上部構造の材料により費用が変わります。詳細は個別にご相談ください。

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