歯ぎしり

歯ぎしりとは何か

歯ぎしりとは

歯ぎしりは医学的に「ブラキシズム(Bruxism)」と呼ばれ、無意識のうちに上下の歯を強く噛み合わせたり、横にこすり合わせたりする現象です。主に睡眠中に起こる「睡眠時ブラキシズム」と、日中に起こる「覚醒時ブラキシズム」の2種類があります。

原因は複数の要因が複合的に関わっていると考えられています。最も大きな要因はストレスや精神的な緊張で、現代社会において多くの方が抱える問題です。また、噛み合わせの異常(不正咬合)、睡眠時無呼吸症候群、カフェインやアルコールの過剰摂取、特定の薬物の副作用なども関与することが分かっています。さらに、遺伝的な要素も指摘されており、家族に歯ぎしりをする人がいる場合、その傾向が高くなることも報告されています。

歯ぎしりが引き起こす
様々な症状と健康への影響

歯ぎしりは単に音が気になるだけの問題ではありません。長期間続くと、お口の中だけでなく、全身にも様々な影響を及ぼします。

最も直接的な影響は歯への負担です。通常の咀嚼時の噛む力は体重程度ですが、歯ぎしり時には体重の数倍から十数倍もの力がかかることがあります。この過度な力により、歯の表面のエナメル質が削れて知覚過敏を引き起こしたり、歯にひびが入ったり、最悪の場合は歯が折れてしまうこともあります。

また、顎の関節や筋肉にも大きな負担がかかります。顎関節症の原因の一つとして歯ぎしりが挙げられ、口を開けにくくなったり、顎の関節から音が鳴ったりする症状が現れることがあります。さらに、首や肩の筋肉の緊張から頭痛や肩こりを引き起こすこともあり、生活の質を大きく低下させる可能性があります。

こんな方は特に注意が必要です

歯ぎしりは誰にでも起こりうる現象ですが、特定の条件や生活習慣をお持ちの方は、より注意深く観察し、早期の対策を講じることが重要です。

ストレスの多い生活を送っている方

ストレスの多い生活を送っている方は最も注意が必要です。仕事のプレッシャーが大きい職業(営業職、管理職、医療従事者など)に従事している方、人間関係に悩みを抱えている方、経済的な不安を感じている方などは、無意識のうちに歯ぎしりをしている可能性が高くなります。また、完璧主義の傾向がある方や、感情を内に溜め込みやすい性格の方も要注意です。

睡眠に関する問題をお持ちの方

睡眠に関する問題をお持ちの方も歯ぎしりのリスクが高まります。睡眠時無呼吸症候群、いびき、不眠症などの睡眠障害がある方は、睡眠の質が低下することで歯ぎしりが誘発されやすくなります。さらに、夜勤や交代制勤務により生活リズムが不規則な方、カフェインやアルコールを就寝前に摂取する習慣がある方も注意が必要です。

噛み合わせに問題がある方

噛み合わせに問題がある方では、歯ぎしりが起こりやすく、また症状も悪化しやすい傾向があります。歯並びが悪い方、歯の治療後に違和感を感じている方、入れ歯やインプラントなどの人工物が入っている方は、無意識に理想的な噛み合わせを求めて歯ぎしりをしてしまうことがあります。

薬物治療中の方

薬物治療中の方では、副作用として歯ぎしりが現れることがあります。特に抗うつ薬(SSRI系)、パーキンソン病治療薬、ADHD治療薬などを服用中の方は注意が必要です。これらの薬物が脳内の神経伝達物質に影響を与えることで、歯ぎしりが誘発される可能性があります。

効果的な治療法と予防策

歯ぎしりの治療は、その原因や症状の程度に応じて様々なアプローチがあります。

最も一般的で効果的な治療法は「ナイトガード」と呼ばれるマウスピースの装着です。これは患者様の歯型に合わせて作製する透明な樹脂製の装置で、就寝時に装着することで歯同士の直接的な接触を防ぎ、歯や顎への負担を軽減します。ナイトガードは症状の進行を防ぐだけでなく、既に生じている症状の改善にも効果があります。

根本的な解決のためには、原因となるストレスの軽減も重要です。規則正しい生活リズムを心がけ、リラクゼーション法や適度な運動を取り入れることで、精神的な緊張を和らげることができます。また、噛み合わせに問題がある場合は、歯科治療による咬合調整も検討されます。重症例では、筋弛緩剤の処方や、ボツリヌス毒素注射による治療が行われることもあります。

よくある質問

Q.歯ぎしりは自分で気づくことが
できますか?
A.多くの場合、ご家族に指摘されて気づくことが多いです。しかし、朝起きた時の顎の疲労感や痛み、歯の知覚過敏、原因不明の頭痛なども歯ぎしりのサインです。
Q.ナイトガードは一度作れば
永久に使えますか?
A.ナイトガードは使用により徐々に摩耗するため、定期的な交換が必要です。また、歯の治療により噛み合わせが変わった場合も作り直しが必要になります。
Q.子供の歯ぎしりは心配ありませんか?
A.成長期の歯ぎしりは生理的なものが多く、永久歯が生え揃うと自然に改善することが多いです。ただし、程度が強い場合や他の症状を伴う場合は、歯科医師にご相談ください。
Q.歯ぎしりは完全に治すことが
できますか?
A.完全な根治は困難な場合が多いですが、適切な治療により症状をコントロールし、歯や顎への負担を大幅に軽減することは可能です。定期的な歯科受診と継続的な治療が重要です。

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